親知らずの移植とは?|失った歯を補うもう一つの選択肢
親知らず
歯を失ったとき、多くの方がまず思い浮かべるのは『インプラント』や『ブリッジ』、『入れ歯』ではないでしょうか。
実はそのほかに、『親知らずを利用して失った歯を補う』という治療法があるのをご存じですか?
それが『親知らずの移植(歯牙移植)』です。今回は親知らずの移植について、メリット・デメリット、治療の流れ、成功率、費用、そしてよくある質問までわかりやすく解説します。
親知らずの移植(歯牙移植)とは?
歯牙移植とは、不要になった歯(多くは親知らず)を抜歯し、失ってしまった歯の場所に移植する治療です。自分自身の歯を使うため、人工物ではなく生体組織としてなじみやすいのが特徴です。
例えば、むし歯や歯周病で歯を失った場合、そのままにしておくと噛み合わせや歯並びに影響が出てしまいます。そんなとき、親知らずが健康な状態で残っていれば、それを抜いて失った場所に植え替えることが可能です。
親知らず移植のメリット
1.自分の歯を利用できる
人工物ではなく天然歯のため、噛んだときの感覚が自然に近いです。歯根膜も再生するため、噛み心地や歯の動きに柔軟性があります。
2.ブリッジのように隣の歯を削らなくてよい
ブリッジ治療では両隣の健康な歯を大きく削る必要がありますが、移植の場合はそれが不要です。
3.インプラントに比べて費用を抑えられる場合がある
健康保険が一部適用されるケースもあり、経済的負担が軽くなる可能性があります。
4.歯周組織との適合性が高い
自分の歯であるため、骨や歯肉と馴染みやすい特徴があります。
親知らず移植のデメリット・注意点
もちろん万能ではなく、いくつかの注意点もあります。
すべての親知らずが移植できるわけではない
歯根の形や大きさや骨の状態など、条件が限られます。
成功率に限界がある
報告によると成功率は約70〜80%程度とされています。インプラントより予後が安定しにくいこともあります。
治療期間がかかる
移植後は定着するまで安静期間が必要で、仮歯を使うこともあります。
移植後もメインテナンスが必須
歯周病やむし歯になると、再び失うリスクがあります。
親知らず移植の適応条件
親知らず移植が可能かどうかは以下の条件が関わります。
・健康でむし歯や歯周病にかかっていない親知らずがある
・親知らずの大きさ・形が移植先に合っている
・移植先の骨の状態が良好である
・年齢が比較的若い(一般的に40歳未満の方が成功率が高いとされています)
治療の流れ
1.診査・診断
レントゲンやCTで親知らずと移植部位を精密に確認します。
2.抜歯・移植
親知らずを丁寧に抜歯し、失った歯の場所に植え替えます。
3.固定
移植した歯をワイヤーやスプリントで固定し、安定させます。
4.移植後
移植した親知らずの根管治療を行います。
5.経過観察
数週間〜数ヶ月かけて歯根膜や骨と馴染むのを確認します。
6.最終補綴
定着後、必要に応じてクラウンなどで補強します。
成功率と寿命
親知らず移植の成功率はおよそ70〜80%といわれています。条件が良ければ10年以上機能することもあり、インプラントに匹敵するケースもあります。ただし、歯周病や噛み合わせの影響を受けやすいため、定期的なメインテナンスが寿命を延ばすカギです。
費用について
親知らずの移植は一部で保険が適用されることがあります。ただし条件が限定されており、自費診療になる場合もあります。
・保険適用:数千円〜数万円程度
・自費診療:10万円〜20万円程度
※医院によって異なりますので、事前にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q.親知らずが横向きに生えていても移植できますか?
A.横向きや複雑な形状の歯は難しい場合があります。CTを撮影して確認が必要です。
Q.インプラントと比べてどちらが良いですか?
A.条件が合えば移植は有効ですが、適応条件が限られるためインプラントが第一選択になることも多いです。
Q.移植後すぐに噛めますか?
A.初期は安静が必要で、すぐに強く噛むことはできません。数ヶ月の治癒期間を経て安定します。
まとめ
親知らずの移植は、自分の歯を最大限に活用できる治療法です。すべての方に適応できるわけではありませんが、条件が合えば自然な噛み心地を取り戻すことが可能です。
歯を失った際にはインプラントやブリッジ、入れ歯と合わせて「親知らずの移植」という選択肢があることを知っていただければと思います。
気になる方は、まずは歯科医院でCT撮影や相談してみることをおすすめします。
皆様のご来院を心よりお待ちしています。