お歯黒とは?意味や歴史、歯の健康との関係を歯科医がわかりやすく解説
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「お歯黒(おはぐろ)」という言葉を聞いたことはあっても、実際にどのようなものだったのかを詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。
時代劇や歴史の授業で見かける程度で、現代の生活ではほとんど目にすることのない文化です。
しかし、お歯黒は単なる昔の風習ではなく、当時の美意識や歯を守る考え方が詰まった、日本ならではの文化でもあります。
今回はお歯黒の意味や歴史、そして歯の健康との関係について、わかりやすくお話ししていきます。
お歯黒とは?
お歯黒とは、歯を黒く染める日本の伝統的な習慣です。
主に鉄を含んだ液体を歯の表面に塗り、黒く見せることで、大人としての象徴や美しさを表現していました。
特に江戸時代には、既婚女性が行うものとして広く知られており、「結婚した証」「大人の女性の身だしなみ」として定着していました。
地域や時代によっては、武士や男性が行うこともあったといわれています。
現代では白い歯が美しいとされていますが、当時は黒く整った歯こそが品格や落ち着きを感じさせると考えられていたのです。
なぜ歯を黒くしていたのか
お歯黒は見た目のためだけのものではなく、実用的な意味もあったと考えられています。
当時は今のように歯磨き粉や歯ブラシが発達していなかったため、むし歯や歯周病を予防するのが難しい時代でした。
その中で、お歯黒に使われていた液体が歯の表面を覆い、結果として歯を守る役割を果たしていた可能性があるといわれています。
歯の表面に膜ができることで、
・歯の知覚過敏を軽減する
・むし歯の進行を抑える
・歯の表面を保護する
といった働きがあったとも考えられています。
つまり、お歯黒は当時の人々なりの「歯を守る知恵」でもあったのです。
当時の人にとっての「美しい歯」
今の時代は「白くてきれいな歯」が清潔感の象徴とされています。
しかし江戸時代では、白い歯はどこか子どもっぽい印象を与えると考えられており、大人の女性としての落ち着きを表すために歯を黒くしていました。
また、きちんとお歯黒をしていること自体が、身だしなみに気を使っている証でもありました。
現代でいうメイクやヘアスタイルと同じように、歯の色も外見の一部として大切にされていたのです。
歯科医から見たお歯黒
歯科医の立場から見ると、お歯黒には興味深い点が多くあります。
歯の表面を保護するという考え方は、実は現代の歯科医療にも通じています。
例えば、
・フッ素塗布
・歯のコーティング
・予防処置
なども、歯を守るために表面を保護するという意味では似た発想です。
むし歯部分が黒くなるというデメリットがあるがむし歯の進行を抑えられる薬剤であるフッ化ジアミン銀製剤(サホライド®)は、まさにこのお歯黒をもとに開発されたものです。
もちろん、現代の医療は安全性や効果が科学的に確認されていますが、「歯を長く保つために工夫する」という意識は、昔から変わっていないのだと感じます。
歯の色に対する価値観は時代で変わる
お歯黒の文化を振り返ると、歯の色に対する価値観は時代によって大きく変わることがわかります。
昔は黒い歯が美しいとされ、今は白い歯が健康的で清潔という印象を与えます。
つまり、表現の仕方は違っても、「歯をきれいに見せたい」という気持ちは今も昔も変わらないのです。
現代は「白い歯」が美しさの基準に
現在は、白く自然な歯が清潔感や若々しさの象徴とされています。
実際に患者さんからも、
・歯の黄ばみが気になる
・口元の印象を明るくしたい
・人前で笑うときに気になる
といったご相談をいただくことが増えています。
歯の色は顔全体の印象に大きく影響します。
同じ方でも、歯が明るくなるだけで表情が柔らかく見えたり、若々しい印象になることも少なくありません。
お歯黒が「歯の色を整える文化」だったように、現代ではホワイトニングやクリーニングによって、自然な白さを目指す方が増えています。
歯を削ることなく本来の色味を明るくしていく方法もあり、見た目の印象を変えるきっかけになることもあります。
まとめ
お歯黒は、日本の歴史の中で生まれた独特な文化であり、単なる見た目の習慣ではなく、歯を守る知恵や美意識が詰まった風習でした。
時代が変わった今でも、
・歯を大切にしたい
・きれいな口元でいたい
・印象を良くしたい
という気持ちは変わっていません。
現代では、毎日のケアや定期検診に加え、クリーニングやホワイトニングなどで歯の見た目を整えることも可能です。
歯の色が気になる方は、まずはご自身の歯の状態を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
健康的で清潔感のある口元は、日常生活の自信にもつながります。





